プロローグ:蝶さんお帰り!!

 こんにちは。熱海のフォレスタ―さとちゃんです。

 この熱海の日記では、毎月の熱海の森での作業や森の変化、また熱海の自然に関するあれこれについて書いていきますので、皆さんよろしくお願いいたします!


 今回は、プロローグ編です。
自然のスピードは、時に予想を上回っているのかもしれません。熱海の森に蝶の故郷が戻ってきたようなのです。

ジャコウアゲハの産卵 


写真はジャコウアゲハというアゲハ蝶の仲間、止まっている草はオオバウマノスズクサという草で、蝶はこの草に産卵したようなのです。師事する蝶の専門家にこの写真を送ったら「ジャコウアゲハの写真、腹は見えませんが、お腹を大きく内側に曲げて産卵中に見えます。足を踏ん張っていて、けなげにがんばっています。」という、嬉しいコメントが返ってきたのです。


この場所「カゴノキ平」は常緑樹が密生していて、光が入らないせいか、鹿の食害か、全く下草のない荒涼とした森だったのです。これではいけないと、昨年末からシキミ、ヒサカキ、ヒイラギなどの小~中径木を選択的に切り始めました。生きている樹木を伐採するのは気がひけましたが、森の百年の計のためと自分に言い聞かせて、仲間とともに作業を続けました。年が明けて春になると、森に待望の光が差し込み始めました。そして、若葉の季節には、森の住人である、コナラやサクラなどの落葉樹が気持ちよさそうに枝を伸ばし、若葉をそよがせました。

草が生え始めた


7月の作業日に行ってみたら、林床にいつのまにか草が生え始めているのです。埋没種子として冬眠していた種に日が当ったことによって、目を覚まし芽を出したのです。その草の中にオオバウマノスズクサがあり、ジャコウアゲハが目ざとくそれを感知し、卵を産んだようなのです。


こんなに早く森の変化がみられるとは予想外、自然の再生力のたくましさに驚きました。かつて人々が里山として大事に利用してきたに違いないこの森、エネルギー革命という人間サイドの勝手な変革によって、利用されなくなり放置されて半世紀が経過、その間鹿の旺盛な食害によって、鹿が忌避する木々のみが成長・密生するという、余り例のない森を形成してしまったのです。こういう森は水源
涵養か土砂流出を防ぐという本来の森が備えるべき、機能が大幅に低下します。そして、生物多様性という観点からも少し乏しく思われるような森なのです。こんな森を、弥生時代以来私たちの祖先が大事に守り育ててきた、豊かな里山として蘇らせるのが熱海の森フォレスタ―の使命だと思っています。

 

 森は自然のままに放置すれば元通りになるという話は、完全な誤解です。一度人が手を入れて生態系を変えてしまった森(二次林と呼びます)はずっと私たちが世話をして守ってやらなければ、荒廃してしまうのです。ずっと森に守られて生きてきた、私たち陸上生物、その代表である人類は、今こそ率先して、森を守り育ててゆかなければなりません。(2011.8.4記)

Present Tree 事務局

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